俺様常務の甘い策略
「いい根性してるね。まあ頑張って」

何だ?

今、藤堂の目が一瞬だけ優しい目になったような気がしたのは気のせいだろうか。

ちらりと壁時計に目をやれば、午後七時過ぎ。

外もいつの間にか暗くなってて、いつも校庭で練習している野球部ももう片付けを始めている。

しまった……藤堂が先生に呼ばれて席を外している間、ずっと眠っていたらしい。一時間も寝てたのか。

「それで、俺が席を外してから全然進んでないみたいだけど。まさかずっと寝てたなんて事はないよね?」

藤堂がうっすら口角を上げながら、私の目を覗き込む。

……わかってるなら聞くな。ほんと、性格悪いな。

「悪かったわね。今日寝不足なのよ。でも、早く帰らないと、寮の食事の時間も終わっちゃうんだけど……」

お腹が空いてきたし、食べないと持たない。

「素直に認めるのは潔いけど、それは秋月の問題。目の前にある仕事は全校生徒の問題なんだけどな。秋月なら優先順位くらいわかるよね?」

藤堂が嫌みったらしく言って、ニヤリとする。

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