めくるめく恋心
「日本に戻ってきて初めての海です。 連れてきてくれてありがとうございます。」

「ニューヨークに居たんだっけ? どのくらい居たの?」

「二年半くらいです。 両親にワガママ言って私だけこっちに戻ってきちゃいました。」

「それで篠宮君の家に住んでるんだね。」

「はい。 一人暮らしは危ないからって言われて。 でも一人でいるのは好きじゃないので、うーちゃんのお家にお世話になれて良かったんですけどね。」


事故で家族を喪うまでは一人でも平気だった。でも今は違う。一人だと感じてしまうと無性に泣きたくなる。


「寂しがり屋なんだ?」

「あはは、そうですよ。 男の人はそういう人いなさそうですよね。」

「どうかな? 寂しいって思うのは男女関係ないんじゃないかな。」

「千里先輩も寂しがり屋ですか?」

「分からないけど、好きな人に傍にいてほしいって思うのは、少なからず寂しいと思う気持ちもあるかもしれないなって思うよ。」


目を見ながら言われて恥ずかしくなった。耐えられなくなって顔をそむけると、つないでいた手の指が絡まった。更に密着した手にドキドキした。

このドキドキはどういうドキドキなのか分からなかった。こんな風につないだのは秋ちゃんとだけ。きーちゃんやうーちゃんと手をつなぐ事はあっても、こんなつなぎ方はしない。


「千里先輩は失恋ってしたことありますか?」

「……失恋したって事になるのかは分からないけど、付き合ってる子に振られた事はあるよ。 好きだったけど、別れを切り出された時素直に受け入れられたんだ。 その程度の好きは、好きのうちに入らないのかもしれないって思ったりもする。」



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