めくるめく恋心
バス停に向かう途中、“泊まらないで帰ることにした。”と千里にメールを送った。

バス停に着いたはいいけど、時刻表を見て愕然とした。

_バス行ったばっかり……しかも一時間に一本って……。

一度コテージに戻ろうかと思ったけど、ちょっと気が引けてスマホの地図で駅までの時間を割り出した。

_徒歩30分か……。

さっきから車は通るけどタクシーは一台も通らない。どうせする事もないし、ゆっくり歩いて駅に向かうことにした。

海だしバーベキューだしと思って、スニーカーを履いて来て正解だったなと思った。もしヒールを履いてたら歩こうとは思わなかっただろう。

空は薄暗くなって、海も昼間みたいにキラキラしていない。昼間の太陽に照らされてる海も好きだけど、今は落ち着いた雰囲気の海の方が見ていて心地よかった。

暫く歩いていると、フラッと眩暈の様な感じがして近くの石垣に腰を下ろした。

_ちょっと気持ち悪いかも。

鞄の中からペットボトルを取り出して水を一口飲んだ。

どのくらい休んでいたかは分からないけど、顔を上げると辺りはコテージを出た時よりも暗くなっていた。

_これならバス待ってた方が良かったかも。


「っ!?」


立ち上がろうとしたらいきなり腕を引っ張られ、石垣の後ろに倒れてしまった。

急な出来事と背中の痛みで何が起こったのか分からなかった。

私を見下ろす知らない男性。その男性は上手く声が出せない私の腕を掴むと、力いっぱい茂みの奥へと投げ飛ばす様に追いやった。


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