めくるめく恋心
秋ちゃんの表情はいつもと変わらないけど、射抜くように加賀美さんの事を見ている。

_この雰囲気はマズイ……!


「友達から加賀美さんの事聞いてて、誤解させたらまずいなと思って話を……」

「ココはちょっと静かにしてて。」

「…………。」


この柔らかそうで威圧的な言い方……久しぶりだ。 こうなってしまったら下手に口出しすると余計怒らせてしまう。


「沙彩、どういう事か説明してくれる?」

「……体育祭の時恵奈と五十嵐君と親しそうに話してたし、名前もそうだったから、秋生が言ってた子だって直ぐに分かった。 死んだって聞いてたから信じられなかったけど、秋生の態度とか見てて絶対そうだって思った。 そう思ったら居ても立っても居られなくて、市川さんに会いに行ったの。」


俯きながら話をする加賀美さんのグッと握られた手は震えていた。私は話に割って入れるだけの言葉が見つからなくて、ただ話を聞いている事しか出来なかった。


「また市川さんと寄りを戻すかもしれないって思ったら、辛くて悔しくて、じっとなんてしていられなかった。 私は高校からの秋生しか知らないけど、好きな気持ちなら絶対負けない。 今更出てきた市川さんに取られたくなかった!!」


秋ちゃんは瞳を潤ませる加賀美さんの腕を掴むと私を見た。言いたい事は何となく分かる。


「私はきーちゃんのクラスに行くところだから、気にしないで。」

「ごめん。」


私に背を向けて歩く二人の背中を意味もなく見つめた。すると誰かに肩を叩かれビクッとなった。
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