風は囁く「君と輝きたいから」
7章/オルフェウス
桃香さんの声は快活だった。

「CMが仕上がった。試写会は明後日」

 CM撮影後。連日の会議で少々不機嫌だった桃香さん。

毎朝「吹き出物ができた」と嘆き、昨日まで野菜スムージーを毎朝二杯も飲んでいた。

でも、吹き出物がまだ引いていないのは敢えて言わないし突っ込まない。

「詩月さん、来るの?」

 俺はテンションMAⅩで訊く。

「彼はNフィルがコンサート日だそうだ」

 空と俺は残念と呟き、肩を落とす。

「卒業式も終わったのに相変わらずやな」

 昴は表情を変えず、毒突く。

「周桜さんが答辞を読んで1曲弾く辺り。あれが学長の案だったのはビックリ」

 卒業式当日、詩月さんは答辞を読み、颯爽とヴァイオリンを弾いた。

曲は「Jupiter」だった。

原曲ではなくCM用にアレンジした「Jupiter」をさらにアレンジし、テンポをゆっくりさせ、しっとりと聴かせた。
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