『雲に隠れし夜半の月』
若草四郎が席に着いて、焼きそばパンを食べていたら、一年生の山栗沙也加がやってくる。

「若草さん、今日は、ゲットできた、」笑
「ありがとう、沙也加ちゃん、」
「じゃあまたね、若草さん、」

後ろにいた湊義経が覗き込む。
「あっそれ、『なんてコッタ』じゃあないか!」

その『なんてコッタ』は、バナナ味のプリンで、カラメルの代わりにチョコシロップがかかっている。
毎週、月曜日と木曜日に30個の限定品であった。
生徒たちは、競い合うように売店に並ぶ。

「お前、山栗とできてんのか?」
「そんなんじゃないよ、向こうが勝手にしていること、まぁ嬉しいんだけど、」
「一年生たらしこんで、どんな手を使った?」
「さぁーね、」笑

その『なんてコッタ』は、蓋を反対にすると皿になる。
容器を取るとチョコシロップがたらりと、如何にも美味しそうである。

「ちょっと、くれよ、四郎、」
「ダァーメ、」
「ふん、ケチ、」
「私にも、分けてくれない、若草くん、」
「うーん、一ノ瀬さんならいいよ、」

若草四郎は、プリンを弁当箱の蓋に乗せてやる。

「お前ら、きたねぇぞ、できてんのか?」

湊がそう言うと、一ノ瀬が、笑いながら、

「そうなの、若草くんとは、良いお友達だから、」笑

側で、聞いていた式部香子は、笑っていた。
「この人たちなら、仲良くなれる」ような気がする。と思っていた。
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