夢色約束

デート

「じゃあね、由羅」


放課後になり、私は笑顔で由羅に手を振った。


「楽しんできなよ?デート」

ニヤニヤとした由羅が言った。


「そ、そんなんじゃないから!ただの寄り道!」


「はいはい」

呆れたように笑う。


「香里奈、校門でな」


「うん!」


「香里奈、なら下駄箱まで一緒に行こ?」


「由羅!行こー!」

私は由羅に抱きつく。


「わっ!もぅ…」


「ふふふ」

そして、下駄箱につき、開けると……


「ん?」


「どうかした?」


「なにこれ」


「んー?」

私の手には折りたたんだ紙。


「内容は?」


「えーと……水月香里奈さん。放課後、屋上に来てください」

なにこれ


「行くの?」


「んー、せっかく書いてくれたしなぁ」

紙もったいないもんね?


「なによ、それ」

呆れたようにため息をつく由羅。


「でも、はやく光のとこ、行きたいしなぁ」

どーしよ。


「さっさと行って終わらせば?」


「ん、そーだね。行ってくる」


「行ってらっしゃい」



【ごめん、光。屋上に呼び出されたから行ってくるね。すぐ戻るから! 香里奈】

送信!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ガチャ


「誰か、います……?」


「あ、来てくれた」

いや、呼び出したのあなたよね?

てか、どなた?

人覚えるの苦手なんだよなぁ…特に男子。


「あの、なにかごようですか?」


「もしかして、わかってない感じですか?」


……なにが?

なにも言われてないのにわかるはずないよね?


「あー、ならいいです。単刀直入に言いますね」


「あ、はい」

よかった。早く終わりそう。


「ずっと前から好きでした!付き合ってください!」


「あの……









誰が好きなんですか?」


「へ?」


「あ、もしかして……光?」


「は?」


「女の子じゃないから、光に言いにくくて、代わりにって?あ、それか付き添いですか?」

なるほどね!


「あ、いや」


「光はああ見えても、意外に優しいから、ちゃんと言ったら聞いてくれると思いますよ?」

男の子でも……多分、ね?


「あの」


「はい?」


「五月くんとは、付き合ってるんですか?」


「はい?あぁ、これから光に付き合いますよ?」


どこ行くのかは知らないけど……ん?出かけるから、付き合うとは言わないのかな……。


「え!?いつからですか?」


「えーと……」

今から……そう言おうとした時。


ふわっ

この香り……


「おせーよ」


私の大好きな、安心する香りに包まれた。


「光!」


「いつまで待たせんだよ」


「そんなに経ってないじゃない」


「寄り道して帰るって言っただろ」


「わかってるよ」


「わりーな、こいつ返してもらう」

グイッと腕を引かれ光の腕の中に収められた。

なっ!

顔に熱が集まるのがわかる。

あー、絶対真っ赤だよ……もぅ……。


「あ、はい。なんか、ごめんね?香里奈ちゃん」


「ん?大丈夫だよー頑張ってね!」


「う、うん」

男の子はそそくさと屋上を去っていった。


「あいつ、誰?」

……あ。


「名前、聞くの忘れてた」


やってしまった……


「お前、バカだろ」


「うるさい!てか、離してよ!」


「やだ」


「なんでよー!」


「学校じゃ、俺らは恋人同士だろ?」

『学校じゃ……』か。

これが、普通の恋人同士になる日は、来るのかな……。

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