『私』だけを見て欲しい
「あるよ…だから、お前に向いてると思って頼んだ。…使ってやってくれ…と」
「で…でも、加賀谷さんは、ホントに私の力が必要なんですか⁉︎ 『美粧』ほどの会社なら、他にも有能な人材いるでしょ⁉︎ 」
「いるだろうな。…でも、アイツがあの会社の社長みたいなモンだから、そんなのどうにでもなるんだよ…」
「社長?加賀谷さんが?…あの、それ、どういう意…!」

急に動きだしたケータイにビクついて止める。
ポケットの中で、振るえる電話を取り出した。

「すみません…ちょっと失礼します…」

画面を見る。
泰の学校からだ。


「…もしもし…佐久田です…」

ひょっとして、泰にまた何かあったのか…と思った。
担任の先生は穏やかな口調で、こう切りだした。

「先日はすみませんでした。泰良君のことですが、今日も欠席されるんでしょうか?まだ来てないようですけど…」
「えっ⁉︎ …」

一瞬、言葉を失ってしまう。
今朝は頭もお腹も痛くないから行く…と言ってたのに…

「す…すみません…きっと体の調子が悪いんだろうと思います。今日の所は、休ませます。…はい。どうも、ご連絡頂きまして…ありがとうございました…」

面食らいながら電話を切った。
深くため息をつく私に、彼が聞く。

「…子供がどうかしたか?」

気にしてる。
この人の子供じゃないのに。

「はい…どうも勝手に学校を休んだみたいで…」

< 142 / 176 >

この作品をシェア

pagetop