『私』だけを見て欲しい
ワタシの顔
…あれから、拓斗さんさんは、時々ウチに来る。
泰と遊んで夕飯を食べて帰る。

最近、あの子は少し明るくなった。
学校にもちゃんと通ってる。
からかいやイジメも、先生達が目を光らせてるみたい。
少し、下火になってるようだった。


「タクトはいつまでたってもゲーム上手くならないんだよ。お母さん」
「…そう」

すっかり名前で呼び捨ててる。
相手は自分よりかなり年上で、確実に自分の父親よりも上なのに…

3人で食卓を囲むのは今日が最後。
明日、母が退院するから。

(お母さんがこの状況見たら、きっとスゴく驚くと思う…)

未だに自分が一番信じられない。
3人で夕飯食べてる。
これって、まるで親子みたい…

「お前はそう言うけど、こっちは社会人なんだぞ!仕事もしてるし、遊んでばっかいられないんだ!」

トモダチのふりが上手いですね…と言いたくなる。
上手に振る舞ってる。
真似できない。
やはり師匠だ。


賑やかな食事が済んで、少ししてから彼は帰る。
あれから発作は起きてない。
ごく稀にしかないから、心配はいらないと言われた。

「長年の不摂生みたいなもんだ…気にするな」

酒の飲み過ぎだと言って笑ってた。
普段眠そうにしてるのも、飲み潰れて居眠りするから…だと教えてくれた。

体に悪い事ばかりしてる。
一人でいる時に発作が起きたら…と考えると怖い。
側にいてあげたい。
誰に止められてもいいから。




「結衣…?どうかしたの…?」
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