『私』だけを見て欲しい
20歳の頃、いつか働き出す時の為に…と学んだ通信教育。
カラー、配置、高低差に奥行き。

積み木やブロックのように、パーツで部屋を作り上げる勉強は、コツコツタイプの私には合ってた。

「佐久田さんの趣味、絶対ブロックでしょ!」

城作りとかやってそー!…とか、勝手に決めつけないで。

「違うよ。そんなのした事もない」

積み木はあるかもしれないけど。

「立体的に物が見れるって、女性には珍しいんだよ⁉︎ 大抵の女の人は、アタマが二次元止まりだから!」

失礼なことばかり並べ立てる。
悪気はないのかもしれないけど、ちょっとヒド過ぎ。

「れんや君…その発言ちょっとヒドくない⁉︎ 」

私はともかく、他の女性が聞いたら怒るよ⁉︎

「すんません!でも、ホントにカンドーしたから!」

「そっ。…それは良かった」

あえてお礼を言うような気にもならない。
あっさり受け流してしまおう。

「じゃあ私はこれで。売り場の電気と換気扇、消しといて」

階段下り始める。
後ろを追いかけてきた『れんや』君は、私の前に立ちはだかって叫んだ。

「オレ、断然、佐久田さんのファンになった!新歓パーティーもヨロシク!」
「えっ⁉︎…あ…う、うん…」

勢いに押されるように返事した。
『れんや』君は満面の笑みを浮かべ、飛び跳ねるように階段を下りてく。

一人取り残されたワタシ。
その耳に聞こえてくる、さっきの褒め言葉。
< 35 / 176 >

この作品をシェア

pagetop