『私』だけを見て欲しい
彼の言い方にドキッとした。
どうして私の年、知ってるんだろう…。

「でもさ、9才も離れてるように感じないんだよ。若い…って言うか、どっか幼くて…」

肩抱かれてるから?
それとも、言い方が甘いから?

ドキドキが増す。
そんなふうに褒められたからって、絶対にその気になんかならないから。

「守ってやりたい…ってか、そんな気にさせられんだよね。この人…」

ギュッ…と肩を強く抱かれた。
震える様な胸の内。どう表現していいか分からない。
こんな感覚自体が久しぶりで、恋に恋してしまいそうになる…。

「…も、もうっ!調子いいんだから〜!」

笑いながら離れた。
これ以上一緒にいたら駄目。
自分の方が勘違いしそうになる。

「…ビール注いでくるから。また後から来るから…」

立ち上がろうとした。
でも駄目。やっぱり引き止められる。

「…行かさない!佐久田ちゃんはオレのもん!」

きゅん…とさせられる。
ウソだって、分かってるのに。

「『れんや』君…」

困ったように見つめる。
飲んでるのにマジメな顔で返される。

(駄目だ…この人には負ける…)

子犬みたいな可愛い顔。
側にいてやらないと…思うのは、彼よりもきっと私の方だ…。

握ったまま放さない手を握り返した。
隣に座り込む。
幹事役も何もかも頭から無くして、『カノジョ』として、側に居続けた
ーーーーー

< 47 / 176 >

この作品をシェア

pagetop