『私』だけを見て欲しい
「あ…マネージャーいたんっすか……おはようございます!」

隣に立ってた人に気づいて慌てる。
宴会の流れのまま、やって来るのが間違いなんだ。

「おはよう。…なんだ、その佐久ちゃんってのは…」

呆れ返られる。
当たり前。私の方が年上で、先輩だもん。

「お友達じゃないんだぞ⁉︎ 」

笑いながらの注意。
特に怒ってるふうでもなさそう。

「スンマセン。ふざけ過ぎっした!お二人とも、金曜日はお疲れさまっした!」

若い子特有の喋り方。
自分の子が会社でこんなふうに話してたら、間違いなく注意するとこだけど…

「お疲れ、お疲れ」

マネージャーまで砕けてる。
彼にとっても『れんや』君は、可愛いらしい存在なのかも。

「佐久田さん、金曜日はいろいろと有難うございました。いちおー礼言っとこうかと思って…」
「…そんな大した事してないわよ。気にしないで」

マネージャー手前、なんとかフツウに接する。
胸の中では、ドキドキが止まってない。

「いつか、礼代わりにランチ奢るんで!」
「はいはい。ありがとね!」

…早くどっか行ってほしい。
そんな思いで、いい加減に言葉を返した。

「じゃあまた!」

来た時と同じように走り去ってく。

彼のいる外商部は1階。
滅多なことがない限り、上がってはこない。

下りてく先を見つめる。
自分よりも9歳年下の彼に惹かれるなんて、私はどうかしてる。
はぁ…と小さなため息。
それを聞きつけたかのように、腕を握られた。
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