押してダメでも押しますけど?
「ほら、横になって。」


「え?」


「いいから、早く。」



横になってと言われ、簡単に従えるような状況じゃない。



それでも社長がせかすものだから、上手く抵抗できずに結局社長のベットに横たわってしまった。


すると社長がわたしに布団をかぶせた。


すっぽりと覆われて、目から上くらいしか出ていない。



「あの・・・社長?」


戸惑う私をよそに社長は私の横に寝転がった。


そのまま布団ごと抱きしめられてしまう。



「しゃ、社長!!」


「しー。静かに。聞いてみなよ。」


「え?」



「雷の音。小さくなってる。」



言われてみると、確かに雷の音は耳をすませないと聞こえないくらいに小さくなっていた。


代わりに規則正しい心臓の音が聞こえる。



「な?大丈夫だろ?

 だから、もう寝ろ。」


そう言って、社長が私の頭を撫でる。



人に頭を撫でられたのなんて、もうずっと昔で、久しぶりの感覚が心地よい。



「このままですか?」


「このままです。」



最後の抵抗とばかりに尋ねるも、社長が放してくれる気配はない。



ここで放してもらって、部屋に戻っても一人で眠れるとは思えない。



諦めて目を閉じると、布団ごしだけど、抱きしめられる感覚と、頭を撫でられる感覚に安心感を覚える。




その安心感に身をまかせると、ふーっと眠りに落ちて行くのがわかる。



「あかり、おやすみ。」


社長の声は聞こえたけど、それに返事を返す事は出来なかった。


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