探求者たちの苦悩




「雑賀クン……持ってるの?」

「ええ。本当は霊術士の方に興味があったんです。大学で研究の楽しさに目覚めて……それでも一応、資格は取りましたけどね。何か役に立つかもしれないと思って」

 オカルト研究者の中で、霊術士の資格持ちは珍しくない。
 才能がある者しかなれないから一応とか。除霊システムの実地データをとるためとか。
 興味本位から実務的な理由まで様々ある。


 ただ彼の場合、虫も殺さないようなタイプに見えたので少し驚いた。

 ちなみに、私は大学時代に適正検査を受けたけど。霊視能力がサッパリないため、書類選考で落とされた。
 遥香は問題はなかったのに資格を取らなかった。理由を訊いたら、「バカね。持ってない方が拓真さんに守ってもらえるでしょ」と、返された。

 わかりやすい女だ。



 そういうわけで、


「霊術士は、俺と雑賀くんしかいないか……少し厳しいな」

 セクター長が唸る。

 資格を持っているのは、ふたり。危険を回避するには心許ない。

 互いに自分と同僚五人を守るとなれば、誰でも厳しいだろうなぁ。




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