青春に、寄り道中。



「吉井さん、この最初の文ってなにも見ないで現代語訳できる?」

「えっ……」



今回のテスト範囲にある、源氏物語の『光る君誕生』。
高瀬くんはそれの最初の一文を指してそう聞いてきた。



えっと……。
前の世、は前世のことだったよね。
でも次の“御契り”という単語の意味を思い出せない。


ノートの板書を見たってうまく訳せるかわかんないのに、なにも見なかったらもっとわかんないよ。



「わかんない、かも」

「そっか。 わからないのは単語?」

「うん。ちゃんと覚えてないからかな……」



さすがにこんなんじゃ呆れられちゃうかなあ。


そう思って視線をノートから高瀬くんに移すと、真剣な目をした高瀬くんとぱちっと目があってすぐにまた顔を俯かせた。


なんだか頬が熱い……。
熱でもあるのかな、ってそんなわけないよね。元気だし。


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