青春に、寄り道中。



「吉井さん?」

「あ、ごめん」

「……大丈夫。行こう」

「うん」



高瀬くんは校庭に目をくれることなく、正門に向かって歩き出した。
わたしもすぐにそのあとを追っていく。



「部活、入らないの?」



そんな高瀬くんの言葉に、「え?」と顔を上げる。



「陸上部」

「……入るよ。 明日あたりにでも顧問の先生に言いに行く」

「そっか」



そう言った彼の横顔はどこか切ない。

高瀬くんは……陸上が嫌いなのかな。
でも、走る風景を描いていたよね。

それならやっぱり、そう思うのは気のせいなのかな。



「吉井さんはなんの種目だっけ?」

「わたしは、100とか200とかかな」

「そうなんだ。どれくらいで走るの?」

「100のベストは、12秒2くらい」



去年の9月に行われた地区大会では、優勝もした。

そのあとの上に続く大会は、地区大会が終わってすぐの練習で肉離れを起こしちゃって、出れなかったけど。


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