鬼姫伝説 Ⅱ



「・・・いやです。せっかく、鬼羅とまたこうして会えたのに・・・。私に、消えろというのですか!?」




千代の悲痛な叫びがこだまする。
様子を側で見守っていた琉鬼が苦痛に顔をしかめる。
残酷なことを言っていることはわかっていた。




「酷いことというのは承知の上だ。だが、・・・千菜の命だ。千菜の、人生なのだ」

「鬼羅は、その者の方が大事なのですか?私を大切だと、想っていると言ってくださったのは、嘘なのですか?」

「ウソではない!俺は、千代を今でも思っている・・・思っているが・・・」




思うだけではいけないのだと。
大切。
それだけで、このまま目を瞑っていてはいけないのだと。




「いやです!せっかく目覚めることができたというのに・・・。渡しなどしません!」

「千代!」





次の瞬間、逃げるように千代は消え千菜の身体はグラッと倒れこんだ。
その体を抱きとめながら鬼羅は苦しそうに固く唇を噛みしめる。



千代を傷付けた。
傷付けたいわけではないのに。




このままでいいわけがないのに。
千代を手放したくないと思う自分がいる。



だからこそ、こんなに苦しいのだ・・・。





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