鬼姫伝説 Ⅱ
「着物もその時に渡した。幸せだった。こんな日々がこれからも続いていけばいいと・・・」
「鬼羅・・・」
「千代は、時光との縁談が嫌で城を抜け出していた。その千代を奪い返そうと、時光が軍勢を連れてやってきたんだ。一度は追い返した。でも、二度目の時・・・」
鬼羅の声が痛々しく響く。
「護りたかったんだ。自分の命を捨てれば千代を護れると・・・。千代は俺の代わりに・・・俺を護って死んだ。俺のせいで、死んだんだ」
「え・・・」
「千代と過ごした時間はわずかだった。本当に・・・。でも、長く生きた中で一番濃い時間だった」
千代さんには敵わない。
こんなに、鬼羅に想われて。
鬼羅の事を心から愛して。
命をなげうってまで。
そんな二人に私のはいる隙なんてない。
「・・・つまらない話をしたな」
「ううん。嬉しかった」
「嬉しい?」
「鬼羅の事が知れて、嬉しかった」
「・・・そんなもんか?」
怪訝そうな顔の鬼羅。
鬼羅の優しさは、きっと千代さんに出会ったから。
千代さんがいたからなんだね。