シンデレラタイム
ニコニコと胡散臭い笑顔をあたしに振りまく彼は、背も高くイケメンと言われるような風貌だと思う。
「浅水ですが。」
「あのですね~、」
いや、名前言ってよ。
馬鹿か。
「どちら様ですか?」
「これは失礼。雄弥(ゆうや)と申します。」
ゆうやぁ~?
…全くもって知らん。
つかフルネームで名乗りなさいよ。
「少々お時間頂けませんか?大事なお話が。」
何だろうこの人。
気持ち悪いなあ、その笑顔。
名刺を差し出してきたから一応受け取る。後で捨てるけど。
心の中でこんな悪態をつくけど、口に出すのはタブーだ。
おじさんに教わってきた。
下手に。どんな時でも。
「お引き取りください。」
我ながら上出来。
そう思って彼の横を通り過ぎた。