麗雪神話~青銀の王国~
第一章 はじめての夏

「プミラ、行ってくるわね。いい子にしているのよ」

セレイアが名残惜しげにその大きな首に抱きつくと、プミールという白い毛皮の巨大な獣―名前はプミラ―はきゅうと鳴いて答えた。まるで大丈夫だよ、と伝えたいかのように。

このふわふわの毛皮に顔を埋めるのも、これから一か月かなわないのだと思うと、とても寂しかった。

今は亡き、婚約者の王子ヴァルクスと共にいた頃から、プミラはセレイアの友達だ。離れたことは無い。旅に出てからもそうだった。

けれど今回ばかりは、我慢するしかない。

セレイアたちはこれからプミラには行けない空へ向かうのだから。

そう、天空へ。

「旅券、三名様、一か月ですね。確認できました」

愛想のよい係員が近づいてきて、プミラの綱をセレイアから譲り受ける。

「よしよし、真っ白でふわふわで、とてもかわいい子ですね。僕たちがきちんと世話をしますから、安心してサティエイトへの旅を楽しんでいらしてください」

ここは馬やプミールを預けるための獣舎。

空に浮かぶ無数の浮島につくられた、空中庭園王国サティエイトに向かう旅人たちが、必ず立ち寄る場所だった。
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