さぁ、オレと恋をしてみようか
こういうこともあるんだって、当時は勉強の毎日だった。


窓拭きが終われば今度は、店内の清掃だ。


まだパンは並べられてないけど、なるべくホコリが舞い上がらないように、ゆっくり丁寧に、だけどスピーディに掃除をしていく。


これは美和子さんに言われたんじゃなく、2年かけて、このやり方になった。


最後にパンが置かれる棚も拭くけど、なるべくなら、ホコリ一つない清潔さを心掛けたくて、この掃除の1時間は全力でやる。


だからオープンした時には、疲れちゃってるんだけど…。


「美和子さん、掃除終わりましたー!」


少し大きめの声で言うと、美和子さんが「はーい」と言って、焼きたてのパンが並び始める。


「じゃあ、芽衣子ちゃんは休憩しといで」
「や、でも」
「なに言ってるの。また今日も、わたしたちの呼びかけに気付かないくらい、集中して掃除してたでしょ」


えっ…。ウソ、またわたし気付かなかったの?


< 28 / 283 >

この作品をシェア

pagetop