さぁ、オレと恋をしてみようか
お母さんが、お茶を淹れてる間、シーンとしている部屋に急須にポットのお湯が入る音だけが響く。


「はい。とりあえず、これ飲んで。少しは落ち着くよ」
「……うん」


言われるままに湯呑みに口を付けると、深い溜め息が出るくらいホッとする。


「お母さんには、言えないこと?無理には聞かないけど、話すことで楽になることもあるよ?」


それは、わかってるんだけど…内容が内容なだけに、気軽に言えない。


でもわたしには、経験が少ないから。


「ねぇ、お母さん。〝恋〟ってなに?」
「え?なに急に!…って、芽衣子好きな人でもできた!?」


お母さんは目をカッ!と見開くと、前のめりになって興奮しだした。


「好きっていうか、よくわかんないよ。ただ、名前を呼んでくれた時、すごく嬉しかったの」
「やだ、ちょっとー!娘と恋バナするのが、お母さんの夢だったのよー!もう、嬉しすぎるわー!で?で?」


お母さんのテンションは最高潮で、さすがに引きそうになった。


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