暁天の星


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目の前の古い木造住宅を見上げた。


町の外れにあるその一軒家は、薄汚れた外観に、壁には蔓が生い茂って不気味さをより強調させている。


だから、誰かがその家をお化け屋敷と呼んで怪訝に思う人がいることも知っているよ。



そんな家の目の前で今、幾度となく深呼吸を繰り返す僕も、周りから変な目で見られるんだろうか。


汚れて読めなくなった表札横にあるインターフォン、というよりブザーといった方がいいかな、意を決してボタンを押した。


後戻りはしない。

いいんだ、これで。


晴れた空が眩しい。


最後に1回だけ後ろを振り返って、ゆっくり前を向いた。



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