暁天の星


「ま、私はそういう経緯。」



頬杖をつきながら、アキラは笑った。



「うん、なんかごめん。聞き出して。」

「ははっ!何で謝ってんのよ。今はアンタたちいるし。それが嬉しいから。」

「……でも、嫌なこと思い出させちゃったかなって。」

「まあ確かに人より濃いかもしれないけど。でも、ある意味レアじゃない?こんな経験できるのって。」


…僕はそういう風に思えなかった。
現に今も思えてない。



「那月は何言ってんだコイツ、って思うかもしれないけど。」



思ってないよ。


「どんなに嫌な過去でも、それが今の那月に繋がってると思うよ、私は。ただ、もちろんそれだけじゃない。」

「どうゆうこと?」

「分かりやすくしちゃうと、今のアンタは、あの素敵な思い出とこの素敵な出来事とプラスして、こういった過去があるから、今の那月でいられるってことかな?」



うーん、と頭を抱えながらアキラは僕に出来る限り説明してくれた。



「つまり、嫌な過去でも今に繋がってるから否定しちゃいけないってこと?」

「ははっ。そこまでは言わないし、それは那月の自由。那月が嫌に思うのも仕方がないし。」

「難しい…。」

「ま、要はどんな過去でも今の那月を創ったのに変わりはないんだよ。でも、その過去に含まれてるのは嫌なものだけじゃなくて、素敵な思い出だっていっぱいあるよってこと。」


…そういうことか。
何となく理解した。ほんとに。何となく。



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