いつかウェディングベル
どうにも出来ないと分かっていても俺は抑えが利かなくなる。加奈子を目の前にすると待つと言いながら待てなくなる。
加奈子の為だからと言いながら、自分の為に行動をしている俺がいる。
だから、加奈子に愛想を尽かされてしまうんだ。
このままではいけないと思いながらも自制がきかない。
我ながら加奈子のことになると情けないと思っている。
「子どもの前だもうこれ以上の揉め事はよそう。この子は小さくても大人の会話を雰囲気で分かっているものだ。」
「芳樹、パパが抱っこしよう。 おいで。」
芳樹はとても愛しい存在だ。加奈子に良く似ていてとても愛らしい。
加奈子の分までしっかり抱きしめてやりたい。
「パパ、いたい!」
「ああ、ごめんごめん。よし、肩車だ!」
「わーい! たかい!」
子どもがいるだけでその場が和んでしまう。
親父も俺も芳樹が居てくれるおかげで癒されていくのが分かる。 かと言って子どもは大人を癒すだけの為にいるのではない。
子はかすがいと言うように俺と加奈子を繋ぐ唯一の存在なのだ。そして、それは一生切れることなく繋がれていくものだと信じている。
窓から見える景色はすっかりネオン街に変わってしまっている。
社長室の窓から見えるネオンが綺麗な花火にでも見えるかのように芳樹は喜んでいた。
そんな時間になってもまだ加奈子は仕事を終えていないのか?と、仕事なのか何か起きているのかと俺は不安になっていた。
すると、社長室のドアが叩かれ秘書が加奈子を連れて来た。
「遅くなってごめんなさい。」
「今まで仕事だったのか? 何か問題でも起きたのか?」
「大丈夫よ。吉富さんには私と芳樹が専務に車で送ってもらう約束になっているからと伝えているから。」
確かに吉富にはそう伝えている。
元々は元彼のDVから守る為にと何も知らない吉富から連絡を受けたのだ。それは俺に何とか対処して欲しいとの願いのはずなのだから俺が対応するとハッキリ伝えている。