いつかウェディングベル
「どんなに神に誓っても世の中は離婚だらけよ。」
「命に誓って言う。俺には加奈子だけだ。」
だから、今すぐでなくてもいい。いつか俺の気持ちを分かってくれたらそれでいい。
生きている間に信じてもらえればそれで十分だよ。
今はこんな気持ちが持てるだけでも有り難いと思わなくてはならない。
俺がしてきたことを思えば加奈子と芳樹の人生に関われるだけでも幸せだと思わなければならないんだ。
「他の人と婚約しないの?」
「親父も言っただろう? 俺を幸せにするのは加奈子だって。」
「本当に、他の女の人と結婚しないの?」
「俺を他の女と結婚させたくなかったら、俺を加奈子のものにしてしまえばいいんだよ。」
加奈子の気持ちは俺にある。それは分かっていたことだ。
俺が加奈子を想っている様に、加奈子も俺のことを想ってくれている。
だから、俺たちが一緒になるのは自然なことなんだ。
そして、これまで苦労かけた分、俺が加奈子を幸せにしてやりたいんだ。 芳樹と一緒に温かい家庭を築きたい。
これまで、それが俺の夢だった。婚約者がいても俺の心は沈んだまま晴れることはなかった。
加奈子との再会で俺は生きていると実感できるようになった。加奈子から拒否されようが罵声を浴びせられようが、俺には加奈子からの愛の言葉の様に聞こえるんだ。
それほどまでに狂おしく想っていることを、きっと、当の加奈子は知らないだろう。
だから、何度でも抱きしめキスし一緒に夜を過ごしたいんだ。俺がどれほど加奈子を愛しているのか思い知らせるために。
その為には俺たちは離れて暮らしてはダメだ。どんな粗末な住処でもいい。俺たち親子三人で暮らせればそこが天国と同じになる。
「加奈子、親子三人で一緒に暮らそう。」
芳樹を抱きしめるその手で加奈子も抱きしめた。そして、二度と放さないからと耳元で囁いた。
加奈子は俺の瞳を見つめると何も言わなかったが一度軽く頷いた。
それは俺との生活を受け入れてくれるという意味で理解していいんだよな?
「加奈子、二度と放さないから。」
俺のその言葉に加奈子の目から涙が流れていた。