いつかウェディングベル

「身内の披露宴も必要だが、取り敢えず加奈子さんのお披露目の為に仕事上の関係者を招待した披露宴を行おう。」



それは仕事上必要だと思っていたことだから異論はない。


しかし、加奈子の両親に何と言って謝罪すればいいのか。


俺は加奈子に何と言って謝れば良いのか。


謝って済む問題ではないし、この報告書を加奈子が知れば俺を益々許さないだろう。


今、俺達は幸せな暮らしをしているし、加奈子に不安な思いをさせずにいるつもりだったのに、俺がこれまでしてきたことは加奈子を悲しませることばかりだ。



「それから、加奈子さんにはもう少しだけその事は秘密にした方が良いだろう。」



「だけど、加奈子の親ですよ?!加奈子には知る権利がある。第一隠し通すなんて無理ですよ。いつか知れる。」



「だが、これまで何も知らずにきたんだ。加奈子さんの親には生活の援助をしよう。きっと、名前を出せば受け入れてもらえないだろうから匿名での援助だ。」



芳樹を後継者として公表し確実なものにしたいのは分かる。俺だって芳樹の父親なんだ。芳樹にはこの家の跡取りとしての教育を受けさせたいし、不自由のない生活をさせてやりたい。


それは、俺の我が儘なのだろうか。それとも、身勝手な考えなのだろうか。




だけど、加奈子の実家の状態を知りながら隠すのは俺には無理だ。



加奈子は大学卒業後仕送りを止められたと言うが事実ではない。



確かに送金されなくなったがそれには理由があったんだ!



出産した加奈子が行き先を告げずに引っ越したことで、加奈子の引っ越し先を探そうと車で家を出た父親が交通事故を起こし今も入院中なんだ。



父親は今も夢の中で加奈子を探し求めているんだ。



「未だに意識が戻らずに入院しているんですよ。加奈子には知らせるべきだ!」



加奈子にとって愛すべき父親が意識不明のまま何年も病院のベッドの上に眠っているのを俺は黙って見過ごすようなことはできない。


加奈子にもご両親にも許してもらえるまで償いたい。
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