みんなの冷蔵庫(仮)1
暴かれる
点滴の一滴一滴落ちる音が聞こえるんじゃないかってくらい、部屋の中は凄く静かで、私はただ息をするのにもゆっくり慎重になった。

そうしないと、動揺して激しく脈打ちする体中の血が沸騰し、噴き出してしまうんじゃないかってくらい全身が熱くって、息苦しい。


「しーちゃん、私、しーちゃんの事忘れた事はないけど、そんな風に見た事なくて……」


上手く言葉が出ない事を、こんなに悔しく思ったのは初めてだった。


「うん。分かってる。ごめんね急に」


それはもう、どうしようもないくらいに無邪気で愛くるしい、満面の笑みを浮かべるシグマ。

いつもくるくると動く大きくて真ん丸な瞳が、今は動かずに私を見つめる。


「謝らないでよ」


複雑だった。

想われる事は嬉しい、とかそんなのを感じる間もなく、佐田さんが好きなら邪魔をしないと言われた事が、ひどく胸を締め付けた。


「うん。ありがとう」


シグマはそう言うとニッと唇の端を上げ、いつものアヒルのような口で笑顔を作った。

小さなえくぼが目に付き、私も笑おうとしたけどできなくて、泣きそうになった。


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