みんなの冷蔵庫(仮)1
「今くららちゃんを一人にするなんて、俺が大丈夫じゃない。一緒にいよ。ね?」


そう言って向かい合ったまま両手を繋ぎ、ぶらぶらと左右に振りだした。

シグマの優しさと思いやりは、指先からも十分伝わってきた。

その、自分だけに真っ直ぐに向けられた純粋な気持ちと、瞳に触れ、突然「シグマに今すぐ飛び付きたい」なんて衝動に駆られる。

勿論胸の中で押さえたけど。

失恋したからって、男の子に甘えたくなる私って……駄目なのかな。

駄目に決まってる。
やだな、自分。


どうしようか、何て言おうか、と一生懸命考えながら、ぶらぶらと引かれるままに腕を振っていると、京極と野崎さんが階段を降りてきた。

すぐ側まで来ると野崎さんがにんまり笑顔でいるのが分かる。

よく分からないけど、十万円が貰えたのかもしれない。


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