みんなの冷蔵庫(仮)1
大皿は喜びで目を輝かせるシグマの前に置かれ、おしぼりと紅茶のカップはそれぞれの前に置かれる。

シグマは今更手を拭き、ピカピカ光るフォークで蜜がたっぷりのリンゴを食べ出した。


私と京極のカップにも紅茶を注ぎ終わると、彼女達は出て行った。


ドアが閉まると待ってましたとばかりに口を開こうとする私を、京極が片手で制した。


「会話をするより、一方的に僕が話をした方がくららの理解を得やすいと思うんだけどどうだろう?」


京極はそう言ってカップに形のよい唇を付ける。

私もつられてカップを近付けると、フルーティな甘い香りがして、爆発寸前だった気持ちを少し鎮めてくれた。

一口飲んで、体ごと京極の方を向く。


「それでいいよ。途中わからない事があったら腰を折るかもしれないけど」

「いい子だ」


京極はまた細胞が騒いでしまいそうなくらい優しい声でそう言い、唇を引き上げて微笑む。

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