カフェには黒豹と王子様がいます
 小野田先輩は……こない。

 一番会いたくないのは、小野田先輩。

 でも、一番会いたいのも、小野田先輩……。

 会いたい。

 顔が見たい。

 
 夕日がすごくてぼんやりと空を見ていたら、ノックの音がした。

 扉の方を見ると、徳永先輩が立っていた。

「入っても……いいかな」

 私はうなずいた。

 来ても中に入らない徳永先輩が入ってきた。

「ちょっと落ち着いてるから、話してあげてくださいって、看護師さんに言われて……」

 私は、いすを差し出した。

 徳永先輩はその椅子に座る。

 外から差し込む赤い夕焼けが、徳永先輩を映し出す。

 きれいな顔。

 切なくなる。

 徳永先輩の手が私の頭をそっと触る。

「もう、痛まない?」

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