カフェには黒豹と王子様がいます
「こんな時、マスターならコーヒーとか出すんだろうけど、あんなにコーヒー入れる名人にコーヒーはさすがに出せないから、お前の煎茶なんてどうだ?」

 なるほど。


 そう言えば、一人暮らし始めるときに、煎茶のお道具一式もらった気がする。

 僕は、小野田に和菓子を買ってきてもらい、煎茶のセットを持ってきた。

 煎茶を点てていると博子さんの事を思い出す。

 博子さんの白くて柔らかな手。

 茶器を触るときの優雅さ。

 でも、辛くはなくなった。

 今のこの店のおかげかもしれない。

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