カフェには黒豹と王子様がいます

「いいんだよ。お前に勝てるのはそこしか、なかったんだから」

「別に勝たなくてもいいのに。何の勝負なんだか」

「俺の問題なの、ほっとけ」

「はいはい」


　実はケーキ作りの方にも興味があった。

　よく厨房をのぞきこんで、ケーキの作り方を盗み見た。

「マスター、こういうケーキって、どうやってアイディア出すんですか？」

「インスピレーションかなあ。たとえば、このケーキ食べてみて」

　それはオペラと言われる割とオーソドックスなケーキだが、このマスターの腕にかかったら、天才的な味になる。

「うまいです！」

「でもね、少し物足りないんだよ。このままだと普通のオペラなんだけどね、もうちょっとオリジナリティーが欲しいわけ」

「オリジナリティー……」

「ちょっとしたインパクトだよね。ナッツとかじゃ普通にまとまっちゃうし」