カフェには黒豹と王子様がいます
「ウソついてもわかりますよ。店の前に血が落ちていました」

「俺の血じゃねえよ。通行人の鼻血だろ?」

「でもっ!」

 小野田先輩がグイッとひっぱり耳打ちする

「大げさにするな!徳永が辛いだけだろ!」

そうだった!徳永先輩の気持ちを考えたら……っていうか、赤くなるな!私の顔!ちょっと小野田先輩に腕をつかまれただけじゃないか!ちょっと小野田先輩の顔が近かっただけじゃないか!

「ふふ……あはは」

 ずっと暗い顔をしていた徳永先輩が笑っていた。

「小野田、不用意に女の子の腕つかんじゃだめだよ」

「西口さん、顔真っ赤っ赤だよ」

 マスターも笑う。

「こんなの女じゃねえよ」

 と言いながら、私からパッと離れる小野田先輩。

 もうなんでもいい。徳永先輩が笑ってくれた。それがうれしかった。
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