カフェには黒豹と王子様がいます
「うん、魔法解けかかってた」

 また徳永さんが笑った。

 うれしい。

「あ、笑った」

「え?」

「香織、今笑った」

 私、もしかしたら徳永さんが笑うと笑うのかもしれない。

 徳永さんは少し嬉しそうに私を見た。

「香織の笑顔がたくさん見れるようになったら、僕の魔法もとけると思う」

「……うん。私も徳永さんの本気の笑顔が見たい。だからそばにいてあげる」

 この感情に、名前なんて付けられないけど、お互いそうやってそばにいたいなら、それでいいんじゃないかと私は思った。



           おしまい
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