カフェには黒豹と王子様がいます
「それにお前、片付けの時ガチャガチャうるさい!食器は大事に扱えと言ったはずだ!」

「はい。すいません」

 もう、怒られてばっかりだ。

「小野田先輩みたいに、かっこよく持ちたかったのにな」

 そうつぶやいた私の言葉は、小野田先輩にはきっと聞こえたはずだった。

「その持ち方でもう少し慣れたら、だね」

 洗い物をたくさん乗せたトレンチを軽々と運びながら、にっこり笑う徳永先輩。く~、その王子様スマイルが悩ましい!

「西口さん、ちょっと」

 マスターに呼ばれた。なんだろう、小野田先輩に怒られてばっかりいる私、もうクビなのかな……。

 クビになったら先輩たちのあの美しい姿はもう見られないのね。

 あ、お客さんで来ればいいのか。そうしたらあのこわ~い小野田先輩のほほえみが見れちゃう?

 いや……クビになんかなったらこの店は入りづらくなるよな~。
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