カフェには黒豹と王子様がいます
 プルンとしていて、冷たくて甘さ控えめ。とろりとしたあんこがたまらない。

 葛餅の舌触りが滑らかで、かむのがもったいないくらい。

 そして二煎目。

 さっきより少し温度が高く、苦みがあるけど、それが口の中に残るあんこの後味とすごく合う。

 ああ、気持ちが安らぐ。

 こういうお茶を飲むと、日本人でよかったなと思う。


「ありがとね」

 先に口を開いたのは竹本さんだった。

 少し涙目で、うつむく。

 心は女の子だもんね。

 でも、こんな特技が徳永先輩にあったなんて、また更に尊敬度が増しちゃった。

「こういうカフェのウエイターって、茶道の心得と同じだからね。どれだけお客様に満足していただけるかってことを、常に考えてる」

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