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「美味くねぇわ。つかこんなの飲むやついんのかよ」
「健康オタクのお客様」
「じゃなきゃ飲まねぇだろ」
「身体は大事にしなきゃねー。一生独り身だったら尚更じゃない」
「……」
「良い人でも出来たの?」
「またそれかよ。それしか聞く事ねぇのかよ」
「だって心配だもん。ってか答えないって事は居るんだ」
「いねぇよ」
「ふーん…」
クスクス笑う沙世さんに思わずため息が出る。
やっぱ来るんじゃなった。なんて思っていると、「なんか超、久々な顔だわ」なんて言いながら奥から姿を現したのは優香だった。
「あんた元気なの?」
薄い茶色のボブの髪を耳に掛けながら、沙世さんの隣に立つ。
その風貌は沙世さんと瓜二つのように物凄く似ていた。
「元気じゃないから今、トマトジュース出したのよ」
「あんた好きだもんねー、トマト」
そう言って優香はクスクス笑った。
「そんな事、一言も言った記憶ねぇわ。つかお前、母親そっくりだな、性格が」
「でしょー?よく言われるの。優しいお嬢さんって」
「どこがだよ。つかなんで珍しく帰って来てんの?」
「そう休養中。ほら、」
目の前のカウンター越しから背伸びをした優香はゆっくりとお腹を擦った。
もうすぐで生まれるであろうお腹のふくらみを優しく撫でる優香は口角をあげた。
「え、マジで?いつ産まれんの?」
「9月末かな」
「へぇー…どっちが産まれんの?」
「男。アンタみたいにはなってほしくないわ」
「は?相変わらずムカつくな、お前」
「そんなムカつく奴にかなりお世話になったじゃない」
そう言って優香はニコリとほほ笑んだ。
「はいはい、そーっすね」
適当に流し、俺はタバコをすり潰し残りのトマトジュースを全部飲み干す。と同時に、沙世さんが水を差しだしてくれる。
その水を一気飲みし、喉を潤した。
優香にお世話になったのは本当の事で、沙世さんと優香が居なかったら今の俺は居ないだろう。
何度も説教をされ、そのたびに荒れ狂った俺を、ある意味救ってくれた。