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「…はいよ、」

「ちょっとお前に頼みてぇ事があんだけど」


手掛かりは蓮斗しか居なかった。

裏情報は蓮斗が一番詳しい。

コイツに頼るしか、他はもうないと思った。


「こんな時間に何?」

「探してほしい奴が居る」

「あ、なに?俺に依頼でもするつもり?高いぞ」

「金取んのかよ、」

「ハハッ、冗談だけどよ。で、誰?」

「この前、飯食った後、お前言ってたよな。ムショに送り込んだ奴が出て来たって」

「あー…え?何そいつの事?」

「あぁ。…諒也が刺された」


未だ葵ちゃんの悲鳴と諒也の痛々しそうな顔が浮かんでくる。


「は?なんで?そいつに?」

「いや、誰かは分かんねぇけど。そいつかも知んねぇし、そいつのツレかも」

「マジか。そろそろ警察も動き出すだろうな」

「そうかもしんねぇな。ここにはまだ来てない」

「そか。探すのにちょっと時間かかっかも」

「どんくらい?」

「分かんねぇけど。逃げてるから探し出すの苦労すんだよ」

「あー…」

「出来るだけ早くお前のに取り掛かってやりてぇからさ、とりあえず誰でもいいから女、俺のところに連れて来いよ」

「は?意味分かんねぇし」

「今、ラブホの真ん前に居んだけどよ、俺ひとり入ったら怪しいだろ?だから女がいっと事がさっさと終わっから」

「はぁ?お前、何してんの?」

「何って、厄介な不倫依頼受けてっから男の捜査してんだよ。その男がめんどくさぇ奴でさ」


思わず鼻で笑ってしまった。

こいつもご苦労さんだな。

むしろそんな依頼まで受けてんのかよ。


「こんな時間に?」

「つか、こんな時間に掛けて来てんのはお前もだろうが」

「そうだけどよ。で、それいつ終わんだよ」

「分かんねぇよ、そんな事。だから女居っと中入れるから何か情報掴みやすいから連れて来いって」

「そんな女誰も居ねぇわ」

「あ?お前あんだけ周りに女いんのに誰も居ねぇって事ねぇだろうが」

「そんな呼べる女マジいねぇから。梨々花、呼べよ」

「アイツもう寝てるって」

「んじゃ妹でも呼べよ」

「あー…アイツ使ったら金とっからなぁ」

「払えよそんくらい。なんなら俺が(みお)に払っとくわ」

「俺じゃねぇのかよ。ま、急ぐわ」

「悪いな」

「で、諒也は意識あんの?」

「あぁ。今、手術中」

「まぁアイツは死なねぇだろ。また様子見に行くわ」

「あぁ」


電話を切った後、正面玄関でタクシーを拾い、俺は店の真ん前で降り戸惑う事無く中に入った。
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