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過ぎ去る時間が早くて、いつの間にか朝が来る。
耳元で密かになるアラームを消し、俺は洗面所に向かう。
何故かいつもより目が冴えなくて、思わずため息を吐き捨てる。
その冴えない目を覚まそうと俺はシャワーを浴びた。
夜の店の閉店後に飲む酒は今となっては全く飲まず、だから身体の調子は前に比べると断然いい。
どれだけ酒が身体に負担をもたらしているのか凄く納得させられる。
シャワーを浴び髪を乾かして、そのまま作業着に着替える。
そしてリビングに入った時、珍しくこんな朝早くソファーに寝転んでいる美咲に視線が向いた。
夜中あった教科書は全て片付けられ、ソファーに身を縮める美咲に声を掛けた。
「…学校は?行かねぇの?」
「…うん。まだ行きたくない」
「そっか…」
沈んだ声でそう言われたら、そう返すしかなく、ただ美咲に何を言えばいいのか分かんなかった。
「何時に帰る?」
今まで聞かれた事がない言葉に俺は不思議そうに美咲を見つめた。
「あー…昼過ぎには帰れると思うけど、どした?」
「うん。ちょっと出かけようと思う。気晴らしに…」
「そっか。一人で行けるか?」
「行けるよ。そこまで子供じゃないもん」
美咲はそう言って身体を起し、俺を見て笑みを漏らす。
その久し振りに見る笑みに俺も口角を上げた。
「ま、何かあったら言えよ。電話してこい」
「うん…」
美咲の事だからきっと電話はしてこないだろうと思った。
いつも自分で何もかも解決して、人を頼ろうとはしない美咲の事だから、俺に電話などしてこないだろうと思いながら俺は朝の仕事に向かった。