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「俺なんか追っても追っても振り向かねぇもんな」
「その悩みはお前だけじゃねぇけどな」
「はい?流星さんには分かんないっっすよ」
「分かんだな、これが。俺の隣に居る奴もそうだからな」
「隣?え、楓さん?…な、訳ねぇか。あーあ、タケルと合コンでも行こっかなー」
ダルそうに声を吐き出したアキは立ち上がり、この場から離れていく。
そして俺は軽く息を吐き捨てた。
「つか、どさくさに紛れて俺の事言ってんじゃねぇよ」
「別に減るもんじゃねぇしな」
フッと笑って、「開店すんぞ」そう言って流星は立ち上がった。
それにつられて立ち上がった時、ポケットに入れていたスマホが再び鳴り出す。
取り出して沙世さんの文字に一息吐いた。
「はいよ」
「翔くん。今仕事?」
「今から」
「終わったら来て来て。お店完成したよ」
「まじ?」
「うん。明後日からオープンだから来ない?」
「んじゃ、行くわ。って、あー…いや、今日じゃなく明日行くわ」
「いいけど。珍しいねぇ、そんな事言うの。なんかあるの?」
「いや、」
「そう。じゃあ明日ね」
電話を切って頭に浮かぶのは美咲の事。
寝てるだろうけど、美咲の事が気になって。
なんとなく心配になった。