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愛情の加点


慌ただしく過ぎ去っていった年末年始。


諒也も退院し、俺は仕事に追われる毎日だった。

美咲はマンションにくるも、俺は仕事が忙しくて結局は美咲との時間を長くも居てやれなかった。

クリスマスも、年末年始もお互いに忙しく、あまり会う時間もなかった。


俺が空いてる時間は、別にしなくていいバイトに行く美咲。

そんな美咲をただ、呆れてみるしかなかった。


ただそんな毎日の事に、違和感を感じることが仕方なかった。


「…お前、最近咳しすぎじゃね?」


夜の仕事終わり、ソファーで寛ぎタバコを吸う俺に流星は顔を顰め口を開いた。


「そうか?」


首を傾げながらそう言った俺に流星は更に眉間に皺を寄せた。


「風邪かよ」

「いや、違う」

「風邪でもねー咳って、何?お前、病院行けよ」

「だな」

「だな。ってお前絶対いかねぇだろ」


ため息を吐きながら流星はバックヤードに入っていく。

タバコの煙を吸って吐き出したとき、ゴホン、ゴホンとむせ返るような咳が込み上げてきた。


まだ吸えるタバコの火を消し、何度か乾いた咳を吐き出す。

流星が言う通り、この咳がいま始まったわけでもない。

年末年始あたりから徐々にあった。

風邪の症状とはちょっと違う違和感。


疲れすぎか、、


「ほらよっ、」


バックヤードから出てきた流星が水のペットボトルを俺に向かって投げる。

それを掴んだ俺は、すぐさま喉に流し込んだ。


「そんなに咳してっと誰かになんか言われねぇのかよ」

「誰かって?」

「美咲ちゃんとか言うだろうが」

「最近全く会ってねぇし」


最近ほんとに会っていない。

ほんと、アイツは何をしてんだか…


「ともかく病院行けよ」

「あぁ。帰るわ」


ペットボトルを持って立ち上がり、俺は店を出た。


「さむっ、」


外に出た瞬間、思わず呟く。

手が悴むその寒さに俺は急いでマンションに向かった。
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