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積もる哀愁


どれくらい美咲と会っていなかったのだろうか。

2週間?

いや、3週間は会ってはいない。

だからなのか。そろそろ美咲に会いたいと思った。

夜の仕事がない事をいいことに、なぜか今日はずっと家に居ようと思った。

美咲が来る保証などないけれど、ふと現れるんじゃねぇかって言う期待もある。


電話して会いたいといえば済む話なのに何故かそれが出来ずにいた。


昼の仕事をいつもより早く終わらせ、そのまま風呂に直行する。

シャワーを浴び、髪を乾かし、一息つこうとした時だった。

タバコの箱から一本取り出し口に咥えたとき、ガチャっと玄関の音で視線が向く。

咥えていたタバコをもう一度箱に戻し、俺は足をその場へと進めた。


「おかえり」


突っ立っている美咲にそう声を掛け、俺は口角を上げる。

久しぶりに見るその顔に、会いたかった。と、思わせる。


「帰って来ると思った」


まさか本当に来るとは思わなかったが、そう言った言葉に美咲は何故か薄っすら笑う。


「何?」


何に微笑んでいるのかもわからない美咲に首を傾げ、俺は美咲の頭に軽く手を置く。


「いや別に」


そう呟いて、さらに微笑んだ美咲は俺を通り過ぎて中へと入っていく。


「つか、気になんじゃねぇかよ」


リビングに入り、さっき吸おうとしていたタバコをもう一度箱から引っこ抜き、それを咥えた。

そのタバコに火を点けたとき、


「いや、私もそう思ってたから可笑しくなっただけ」


そう言って、また面白おかしく美咲は微笑む。


「そう思ってたって?」

「私も翔が居ると思って来たから」


そう言われて思わず嬉しくなり、咥えていたタバコを離すと同時に更に笑みが零れる。


「おぉ。マジか」

「うん」


そんな美咲に心の中で、来るのがおせぇよ。なんて呟く。


ほんとに美咲は会いに来ない。

3週間も普通に会わないことが平気な女だ。


そう思うと、余計に苦笑いが漏れる。
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