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シャワーを浴び終え、濡れた髪を乾かして、リビングに入る。

と、その瞬間、俺の視線はソファーに釘付けになってしまった。


「…え、みぃちゃん?」


思わず呟いてしまった俺に、美咲が微笑んで立ち上がる。


「やっぱり来ちゃった」


そう言って頬を緩める美咲に、俺は傍まで行き、無意識に抱きしめた。

外から来た美咲はやけに冷たい。

その冷え切った身体を覆うように俺は強く抱きしめた。


「なんで?バイトは?」

「ママが居るから一度家に帰ってから行こうとしたの。でも翔があんな電話してくるから」

「あんなって?」

「だってあまり言わないでしょ?会いたいって。…だから気になった」

「俺は言ってるよ。言わねぇのはみぃちゃんだろ」

「……」

「何日も会ってねぇと思うと流石に会いたくなるわ。お前は思わねぇのかよ」



そう言って苦笑いすると、「だって、」美咲の口から小さく声が漏れる。


「うん?」

「だって、翔の邪魔したくないから。疲れてる翔の邪魔したくない」


やっぱな。

そう言うと思ったわ。

会わない理由が、俺の為とか意味わかんねぇな、マジで。


「みぃちゃんと会わねぇほうが疲れる」


“会いたかった“

付け加える様に呟き、背中に回していた手を後頭部に移動させる。

あと、何回抱きしめられるだろうか。


会い過ぎると余計に会いたくなって、今度手放す時が苦しくなる。

だから敢えて控えてたところもある。


「うん、私も」

「来てくれてありがとう」

「うん」


ギュッと抱きしめていた力を緩め、ゆっくりと美咲の身体を離す。

離したと同時に視線を落とすと、見上げた美咲の瞳とカチ合う。

頬を緩める美咲に俺も頬を緩め、そのまま唇を重ね合した。
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