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「…はい」

「翔くん、元気にしてるの?」


電話越しに聞こえる沙世さんの声。


「元気と言えば元気。つか、なに?」

「最近来ないからさ、どーしてるかなって思って。仕事終わりご飯食べにおいでよ」

「あー…」

「何よその返事。コンビニばかりじゃ駄目よ」

「いや、そうじゃねぇの。最近、夜中まで起きんのがしんどい」

「そんなの朝の仕事にも行ってるからじゃない」

「そーっすね」


そう呟いて、タバコの煙を深く吐き出した。

朝と夜の仕事の所為か、冬の眠さの所為か、それは分からないが真夜中まで起きるのがしんどい。

蒼真さんと会った時も、物凄くしんどかった。

だからぶっちゃけアフターすんのも物凄くしんどい。


「また体調悪いんじゃない?病院行ってから1ヶ月よ。あれから行ったの?」

「行ってない」

「もぉ、行きなさいよ」

「忙しくて行く時間ない」

「その時間くらい作れるでしょ。今だって行けるのに」

「そーっすね」


そんな行ける時間あったら美咲と会う時間に俺は使う。

なんて言葉を沙世さんには言わず、飲み込んだ。


「ちゃんと病院行ってね。そしてたまには顔を出して。アナタ来ないって言ったらほんとに来ないんだから」

「わかった」

「心配するじゃない」

「大丈夫だから心配しなくていーっす」

「じゃあ、顔出しにおいで」

「また行く」


沙世さんと電話を切って、タバコを灰皿に押し潰す。

そのまま俺は立ち上がり風呂場に直行した。
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