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「タクシーで来たの?」

「うん。酒飲んでっし」


足を進める俺の隣で美咲は俺を見上げて申し訳なさそうに口を開く。


「ごめんね。電話出なきゃよかったね」

「はい?」

「出なかったら、わざわざこんな所まで来ずに済んだのに」

「つか、それ言うなよ。俺は会いたかった。だってみぃちゃん来ねぇし。会いたいって思うのは俺だけ?」


立ち止まって美咲を見下ろすと、美咲は俺を見上げて首を振る。

そんな美咲を俺は無意識に抱きしめた。


「…翔?」

「充電させて」

「充電って、私で?」

「お前しか居ねぇだろ。今度会うまでの充電」


ギュッと更に抱きしめる俺に、美咲はクスクスと笑いだす。


「満タンになるまで時間かかっちゃうよ。みんなに見られちゃうよ?」

「別にいい。こんな時間に誰も歩いてねぇだろ」

「歩いてるよ」

「まだ30%しか出来てねぇからもう少しだけ」

「まだ時間かかるね」


クスリと笑った美咲の腕が俺の背中に回る。

繁華街と違って人通りは全然だった。

あの人混みとは比べ物にならないくらい人だかりはないものの、全く居ないわけじゃない。


だけど、そんな事、今の俺には関係なかった。

誰に見られようが、関係なかった。


きっと自分の中で思った。

あと、美咲に会えるのは一回だと、そう思った。


「終わり」


暫くして身体をゆっくり離し、俺は美咲に笑みを送る。

そんな俺に美咲も柔らかく笑みを浮かべた。
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