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愁哀

絶対そうだろうと思ってた。

美咲からの連絡なんて全くない。

行く前から分かってた事。

だからと言って、俺からも掛けなかった。


25歳、26歳と年齢を重ね、そのお祝いに電話を掛けてきてくれる美咲に、「あぁ、まだ俺の事覚えてくれてたんだ」って思う事くらい。

逢いたいと思うほど会いたくなるから、逢いたいと思う事自体、思わないようにしていた。


俺が26歳になった時、諒也が葵ちゃんと結婚するって言われて、葵ちゃんが妊娠してるって。

そして12月上旬。

諒也と葵ちゃんの子供が産まれたと聞かされた辺りから、自分にでもわかるくらい身体が思うようにならなかった。

身体がやけに重い。

その所為で朝と夜の仕事の両立が上手くできなくなっていた。

それが1ヶ月経っても改善される事はなく新年を迎えた1月中旬。


「…お前、最近どしたよ?全く酔わないお前が最近やけに酔ってね?」


閉店後にソファーで蹲る俺を見て流星が問いかける。

ソファーに寝転んで目を瞑る俺は、こめかみを指で強く押した。


「酔ってるっつーか…頭がやけに痛い」

「頭痛?」

「多分、寝不足」

「朝の仕事も行ってっからだろうが。真面目にアフターして同伴して、寝る間を惜しんでそこまで頑張る必要あんの?」

「何かしてねぇと気がまぎれねぇんだよ」

「美咲ちゃんに逢いたくなるか、」


フッと笑った流星の言葉が身に染みる。

ほんと何かしとかねぇと集中力が切れた時、ふと思い出す。


逢いたい。

口にすると更に逢いたい気持ちが込み上げる。
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