愛してるって言って
何も答えられなくて、顔を伏せながら口を閉ざしていると、目の前から小さく息を吐くのが聴こえてきた。



「ごめん」


「え」


「俺、焦ってるのかも」



ゆっくりと恐る恐る顔を上げると、そこには悲しそうに眉を下げている圭ちゃんがいて。



「圭、ちゃん?」


「兄貴が……」


「え」



一瞬考えるような素振りをしたあと、「……いや、何でもない」といった圭ちゃんは、あたしをそっと立ち上がらせる。


そして圭ちゃんも立ち上がると、そのままドアの方へ足を向けた。



「送ってくよ」


「……」



圭ちゃんが何を言いたいのかも何をしたいのかもわからないから、どう接していいのかもわからなくて。


無言のまま圭ちゃんについていった。
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