ワンコorオオカミですか!?
と思いつつも内心では今から帰ってどんな顔をしていいのか分からずにいた。

ぎゅうっと心臓が鷲掴みされたように痛む。
タクシーから降りて改札機をくぐった瞬間、私の視界の隅に思い切り改札口を走る影が映る。

「狼君!」

「先輩」

丁度私が入って、狼君は飛び出した瞬間だ。
タイミングが良いのか悪いのか、思わず笑ってしまう。

「何を笑ってるんですか!」

機械にカードを振りかざしながら、狼くんが険しい顔でまた改札をUターンして私の元までやってくる。
息を切らし、かなり走ってくれたのが分かる。
でも。

でも、もう狼君からは耳も尻尾も見えない。

「だって、狼君が慌ててるのが嬉しいんだもん」
「俺は嬉しくないです! 何で美国笙と一緒なんですか!」


怒っている姿もついつい目を細めてしまう。
「よく、此処が分かったね」
「結衣に聞きました。駅名と三階建ての家としか知らなかったみたいですが、もう本当に焦りましたよ。危機感が無さ過ぎます! 昨日の今日で、先輩は一体何を――」

いつもの狼君の説教が始まると思ったのに、私には違う事が気になった。


「結衣?」
「あっ……」

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