どこかにトモダチ転がってませんか?
お泊まりは今夜限りだと言いた気です。
そんな事言われなくても分かってる。
こっちだって、これ以上、ここにいるつもりはありません。

…無言で布団を敷きました。
いつもはベッドで寝るから、布団を敷くのは久しぶり。


「…本当にそこでいいのかい⁉︎ 」

食事した部屋で寝たい…と言った私のことを、タコさんは寝る寸前まで心配してくれました。

「ここがイイんです。おやすみなさい」

「おやすみ。ゆっくり寝ていいからね」

キッチンの出入り口から廊下へ出るタコさん。
ガラス戸のついたお部屋の一つがタコさん用。
もう一つがキツネさん。
そして、もう一つは客間だよ…と言われました。

『客間』という言葉は初めて耳にします。
うちには、家族全員が寝る部屋しかありません。
誰かが泊まりに来ても、その人を泊まらせるための部屋はないんです。

布団に入って、天井を眺めました。
昼間あれだけ眠ってしまってたので、さすがに眠くありませんでした。

(…今頃、家ではどうなってるだろう…)

2晩どころか1晩だって、私は他所で寝たことなんかありません。
そんな私のことをお母さんはどんな気持ちで思ってるでしょう…。

…人の気持ちについて、あまり深く考えることができませんでした。
相手の立場になって考える…ということに、スゴく神経を使うからです。

もしかしたら、うちの家族は全員そんなタイプかもしれない。

私の気持ちの悪さも考えず、毒を撒き散らすお母さん。
皆の心配もそっちのけで、引きこもり続ける大ちゃん。
近所迷惑なんか何のそので、歌い続ける月ちゃん。
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